心に響く小さな5つの物語 |
藤尾秀昭/文 片岡鶴太郎/画 |
致知出版社 |
今回は厚くて難しいものを避け誰にでもお読みいただけ、きっと心に響くものがある本を選んでみました。中学生への読み聞かせの際、時間がありますと、この中の一話を読んでおります。 |
『ながい坂』(山本周五郎長編小説集 第11巻) |
山本周五郎 |
新潮社 |
「自分のちからで自分の道をひらいてゆく男を書きます」。執筆に先立つ著者の弁である。主人公は、三浦主水正(幼名は阿部小三郎)。その不屈の半生は紆余曲折に富み、巧みに配された登場人物も彩り豊かで、長編ながら一気呵成に読めてしまう。ある日、小三郎が非番の父と城下の大沼に釣りに行く途中、普段通る橋が毀されていた。通行人の足音が城代家老の若様の勉学を妨げるからとの理由に何の疑問も抱かず唯々諾々と従い遠回りする父。一方、小三郎にとって、この屈辱はその後も彼の心の通奏低音として 消えることなく、また、自らを奮い立たせる原動力にもなっていく。文武両道に精進を重ねた少年は、若き藩主の小姓として召し出され、元服して主水正と名乗り、やがて、名門の山根蔵人が女婿にと望むほどの頭角を現す。しかし、婿入りを潔しとせず、絶えていた三浦家を再興して山根の娘を娶った主水正。その前途には、捨て野に水を引く堰堤工事や現藩主と敵対する勢力との戦いが待ち受けている。山根の娘、名はつる。乗馬や薙刀に長け、聡明で凛とした美貌の持ち主でもある。しかし、誇り高くわがままいっぱいに育てられたため、十年の余も平侍出の夫に馴染まずにいたが、やがて、幾多の艱難に挑む主水正の心に寄り添い、伴侶たるにふさわしいたおやかな女性へと変貌を遂げる。この辺り、周五郎の女性観を反映しているのだろうか。物語は、家老として初登城する主水正が、大手門から城への道がゆるやかな坂であることに驚き、前途を暗示する如く「おれの前にはもっと険しくさらにながい坂がのしかかっている」と呟く場面で幕を閉じる。是非、本書を手に取り、『ながい坂』の醍醐味を味わって頂きたい。 |
また、同じ夢を見ていた
|
住野よる |
双葉社 |
「きっと誰にでも、やり直したいことがある。」映画化もされた「君の膵臓を食べたい」の住野よるさんの作品。友達のいない”私”が、3人の女性と出会い、様々なことを教えてもらいます。年齢も性格もバラバラな彼女たちが、”私”に語りかけた言葉の本当の意味とは。読み終わった瞬間、もう一度読み返したくなる小説です。ぜひ2周お楽しみください。 |
幸せって何?私は今幸せ?人生とは?答えが見つからない人、やり直したいことがある人への、ヒントをたくさん詰め込んだ物語。「時間は戻らない。でも、その先の人生は変えることができる。」「皆、違う。でも、皆、同じ。」読み進めていくうちに、いつのまにかこの言葉がすっと心に刺さっていた。そして、主人公と3人と1匹が繋がった時、心に広がるのは、切なくて不思議な感覚と、温かい何かに包み込まれる感覚。幸せに一歩近づける一冊。 |
伝える力 -「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える!- |
池上彰 |
PHP研究所 |
仕事に限らず、家庭や友人関係、近所づきあいなどさまざまな場面で、「伝える」ことほど難しく、重要なことはないと思いませんか。真意が正しく伝わらないと、誤解が生まれ、状況がややこしくなることさえあります。思えば私も、赤ちゃんの頃から自分の意志を周囲にわかってもらおうとしてきたわけですが、未だに上手に「伝える」ことができません。この本の著者は、テレビでおなじみの池上彰さん。ニュース解説のわかりやすさには定評があります。この本もとても読みやすく、話すことだけでなく、書類や文章についてもさまざまな技術が満載です。が、なるほどとは思うものの、私にできるかといえばそれは別問題なわけで・・・。とはいえ1つ共感したこと。「その言葉に”愛情”はあるか?」人間関係においてはこれこそが基本なのかもしれません。 |
ミート・ザ・ビート |
羽田圭介 |
文藝春秋 |
暑苦しく、息苦しく、狭苦しい、若い男女6人の日常。読み進めるうち、閉塞感に苛まれる。でも・・・。「ビート」とは、実在するホンダのオープンツーシーターの車。実際にこの車と15年程生活を共にしていたことがある。暑苦しく、息苦しく、狭苦しい、そういう車だった。でも、一度屋根を開け放てば、嫌という程外気に晒される。「彼」もこの車を手に入れ、真面に風を受けたことで変わってゆく。風を受けて生きることは辛いが、贅沢なことなのだ。大人たちよ、風を受けて走れ! |
悪童日記 |
アゴタ・クリストフ 堀茂樹/訳 |
早川書房 |
戦時中、双子が小さな町にある祖母の農園に預けられ、過酷な生活を強いられる。双子は農作業を覚え、読み書きを独学で学び、お互いの肉体面・精神面両方を鍛えて日々を生きぬいていく。この物語は双子が真実のみを記した作文という形式で書かれている。感情的な言葉の使用を行わず、事実のみを描写した文体は直接胸に響く。双子は生きていくために時に人々と助け合い、時に残酷に立ち回り犯罪まで引き起こす。戦争の恐ろしさ、陰鬱さを双子の視点から捉えた快作。 |
INTERVIEW映画の青春 |
京都府京都文化博物館/編 |
京都府京都文化博物館 |
映画草創期、まだ日本の映画が先も見えず熱があった頃。時代を彩ったスターやスタッフへのインタビューを構成。三島に長く暮らした昭和の名監督五所平之助が手がけた日本初のトーキーが詳しく紹介されています。 |
森へ行きましょう |
川上弘美 |
日本経済新聞出版社 |
生きている限り、あらゆる瞬間に選択の機会はやってくる。誰しも一度はあの時別の選択をしていたら、今頃どうなっていただろうと思ったことがあるはずです。この小説は、1966年生まれの女性「留津」と「ルツ」が同じ時間の中の異次元に存在する「パラレルワールド」に生きる同一人物として描かれています。 同じ年齢、同じ性別、同じ両親のもとに生まれ育っていたとしても、些細な選択の積み重なりから全く違う人生を歩んでいくふたり。それぞれの人生の思いがけない所で意外な人物が登場したりという仕掛けが面白く、作者の人生や人間への深い洞察が散りばめられた佳作。 |
ゆっくり気ままな老いじたく |
吉沢久子 |
PHPエディターズ・グループ |
老いる事はこわくない!!未知の老いへの道にも気持ちしだいで楽しい事はいっぱいある。読んで勇気が出る本です。 |
1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 |
デイヴィット・S・キダー ノア・D・オッペンハイム 小林朋則/訳 |
文響社 |
この本には毎日1ページ1ページずつ知性を鍛え、頭脳を刺激し教養を高めるための読み物が、1年分収められている。取り上げているのは七つの異なる分野 歴史・文学・視覚芸術・科学・音楽・哲学・宗教だ。各分野において概観、概説が書かれており、初心者にも分かりやすい。この著者が自己の知識を深く掘り下げる、また、新たな興味を引き出すきっかけになると思う。 |
LIFESHIFT -100年時代の人生戦略- |
リンダ・グラットン アンドリュー・スコット 池村千秋/訳 |
東洋経済新報社 |
100年以上生きる時代をどう過ごすべきか。健康的に若々しく生きる年数が長くなるため「老い」自体の概念が大きく変わる。引退後の生活だけでなく、人生全体を見直す必要がある。「教育→仕事→引退」という画一的な人生から、70、80代まで働くことが当たり前になり、仕事のステージが「長期化」する。有形資産、無形資産以外に変身資産(人生の途中で変化と新しいステージの移行を成功させる意思と能力)の構築が必要だ。自分についてよく知ること、多様性に富んだ人的ネットワークを持つこと、新しい経験に対して開かれた姿勢を持つこと。このような見えない「資産」に投資を続け、自らを再創造(リクリエーション)することが100年ライフを送るためのカギとなる。モデルケースで示しながらの内容なので非常に判りやすい。自分らしい人生の道筋を描くための一冊。手もとに置いて何度でも読みたくなる。 |
我らがパラダイス |
林真理子 |
毎日新聞出版 |
都心の一等地にある高級ケアマンション。そこで働く従業員とその家族、入居者たちによって繰り広げられるそれぞれの介護ストーリー。暗くなりがちな「看護問題」がコミカルに描かれることでテンポよく読み進めることができる一冊。本当のパラダイスとは一体何なのだろうか・・・。 |
本のエンドロール |
安藤祐介 |
講談社 |
印刷会社を舞台にしたお仕事小説。作家さんがいて、出版社があって、印刷・製本して完成する1冊の本。私たちの手元に届くまで、たくさんの人が携わり、本にはその人たち一人ひとりのそれぞれの想いが詰まっています。3年の取材を経て作品となったこの本は、本の印刷会社の仕事の工程がよく描かれています。これから手にする本の見方が変わります。 |
好奇心を”天職”に変える空想教室 |
植松努 |
サンクチュアリ出版 |
「どうせ無理・・・」という言葉を無くしたい。それが著者、植松さんの願いです。この本を読むと、何はともあれ、チャレンジしてみようという気持ちになります。進路に迷ったり、人生の目標に悩んでいる若い世代に是非とも読んでほしい一冊です。 |
家守綺憚 |
梨木香歩 |
新潮社 |
ある雨の晩、主人公の「私」が寝ていると、床の間の掛け軸に学生時代に一人で湖にボートを漕ぎに出て、そのまま帰らぬ人となった親友―高堂が現れ、「サルスベリのやつが、お前に懸想している」と「私」に告げる、そんな話から物語は始まります。この出来事が呼び水となったのか「私」の周りには近所で評判の仲裁犬ゴロ―をはじめ、狸に仔竜など、次々と不思議な存在や現象が現れるようになりました。そんな「私」の日常を淡々とした文章で描き出していますが、時折、高堂がなぜ自ら「私」たちの生きる世界から離れていったのか、その理由を読み手に推測させる文章が出てきます。そして、高堂の選択に「私」が怒りを露わにする場面もあります。この物語は、不思議な存在や現象を楽しむだけでなく、高堂と「私」の選んだものの違いから、様々なことを考えることができる物語だと思います。 |
ゆるい生活 |
群ようこ |
朝日新聞出版 |
ある朝、作者は突然めまいに襲われ、漢方薬局にとび込みます。それから体質改善のために食生活を見直し、リンパマッサージを受ける生活が始まる。群さんが行っている漢方薬局を探してみたくなる実録エッセイです。 |
クライマーズ・ハイ |
横山秀夫 |
文藝春秋 |
1985年(昭和60年)8月12日、日本航空123便墜落事故が起こる。東京(羽田)発大阪(伊丹)行ジャンボ機墜落に日本中が慓いた。この事件を題材にした小説がこの『クライマーズ・ハイ』である。記者の職歴のある著者が、この悲惨な事故が起きた群馬県御巣鷹山を舞台に、地方新聞社社員たちの人生を描き出す。男の約束や、見栄、願望、愛情、弱さ、夢が入り混じる企業小説。注目は主人公悠木と登山家安西の衝立岩を共に登りきる約束は果たせるのか、安西の「下るために登るんさー」という言葉に秘められた想いとは・・・映画化や本屋大賞受賞など数々の旋風を巻き起こした作品が今、あなたの中で蘇る。 |
「粗にして野だが卑ではない」石田礼助の生涯 |
城山三郎 |
文藝春秋 |
数え年78才にして5代目国鉄総裁に就任した石田禮助。当時従業員数46万人をかかえいくつもの難問が山積している国鉄のかじ取りを託されました。若いころに努めていた三井物産時代の仕事ぶりも含め颯爽とした人生が描かれています。読んだあとにすがすがしい気持ちにさせられる本です。 |
龍時01-02 |
野澤尚 |
文藝春秋 |
サッカー小説の金字塔。高校生のU-17日本代表のリュウジは守備ラインでサイドチェンジを繰り返す日本のサッカーに疑問を感じ、単身スペインのユースチームに加入する。海外の違う風土で戸惑いながらリュウジは自分の持ち味である速いドリブルを活かした技術を向上させ、スピードスターとして覚醒する。主人公の成長を楽しむ青春物語として読むこともできる。また、壁を乗り越えるとリーグのカテゴリーも上がり、また新たな壁を乗り越えていかなくてはならないスポーツの醍醐味も楽しめる。続編も2冊出版され、著者の死去により五輪代表までしか描かれなかったが、サッカーを愛する人も、知らない人もサッカーのもたらす熱狂を感じることができる本。 |
福翁自伝 新訂 |
福沢諭吉 富田正文/校訂 |
岩波文庫 |
今更自伝を読んだって・・・と思われるかもしれませんが、数ある偉人の伝記・自伝の中で、一生の内に一度は読んでおくべき書物としてお薦めしたい1冊です。福沢諭吉といえば、誰もが知る「学問のすすめ」の著者であり、慶応義塾大学の創始者であり、1万円札に描かれている偉大な教育者ですが、『福翁自伝』は、その福沢諭吉が晩年、自らの生涯を振り返り速記者に口述した速記文を元に作られています。教育者というと堅いイメージを持ってしまいますが、江戸時代の末期から明治にかけて、日本が大きく変わっていった時代の様子や出来事を伝えるその語り口は柔らかく、人間味のある温かい人物像が伝わってきます。明治維新から150年となる今年、日本を取り巻く世界情勢は日々変化しています。幕末の社会変動期を生きてきた諭吉の経験の中に、これからの時代を生き抜いていくためのヒントを見つけ出すことができるのではないでしょうか。 |
誰がために鐘は鳴る 上・下 |
アーネスト・ヘミングウエイ 高見浩/訳 |
新潮社 |
ヘミングウェイの代表作を新訳で読もう!学生時代、30ページで挫折してしまった本書。2018年、新潮文庫の名作コレクションとして発表され再び手に取りました。1930年代後半スペインに起こった内戦、主人公のアメリカ人青年ジョーダンを中心に一癖も二癖もある登場人物たちとの4日間の出来事が描かれています。上・下巻で900ページ越えの長編の中で印象に残った女性ピラールの男勝りな性格が、主要人物の心をつなぎとめているように感じました。 |
マイタイム 自分もまわりも幸せになる「自分のための時間」のつくり方 |
モニカ・ルーッコネン 関口リンダ/訳 |
ディスカヴァー・トゥエンティワン |
「自分を大切にすることが家族の幸せにつながる」…著者の言葉です。仕事に、家事に、育児に、毎日めまぐるしく追われる日々を過ごしていませんか?特に子育てしている女性は、やるべきことが多く、なかなか自分の時間を持つことが難しいのではないでしょうか。そんな方々におすすめしたいのがこの本です。私自身も生活にゆとりがなく、忙しくてなかなか思うようにできないと、ネガティブな感情に囚われてしまいがちになります。でも、そんな肩ひじ張らずに、仕事や家庭の責任から離れ、日々の中で自分の時間を持ち、自分を大切にすることが、心の健康につながると感じます。充実した仕事、家族との時間、そして自分のための時間。この3つのバランスが取れてこそ、健全な日々を過ごせるのです。自分のために使う時間はわがままなどではなく、必ず家族関係によい形で影響する大切な時間なのだと思える1冊です。 |
SHOEDOG‐靴にすべてを‐ |
フィル・ナイト 太田黒泰之/訳 |
東洋経済新報社 |
“アメリカンドリームの陰に日本企業あり" ナイキ黎明期にこんなにも日本とのつながりがあったとは・・・ 創業者自らが語る靴に取りつかれた男たちの熱きドラマ。 |
指の骨 |
高橋弘希 |
新潮社 |
芥川賞に選ばれた「送り火」の作者が初めて書いた作品です。この作品も過去に芥川賞候補に選ばれています。戦争についての作品なのですが、「永遠の0」のように最前線で戦うような話ではなく、負傷した兵士隊をメインにした話です。すばらしい表現力で淡々と鮮明に、けれど生々しく戦争について描かれています。文章は短いですが、読み応えのある作品だと思います。 |
子どもと一緒に覚えたい毒生物の名前 |
ふじのくに地球環境史ミュージアム/監修 加古川利彦/絵 |
マイルスタッフ |
公園のベンチで座っている息子の服の胸辺りにスズメバチがとまった。さて、どうしよう。騒がないでじっとしていれば大丈夫と声をかけ飛び去ってくれるのを待ってみるものの、スズメバチは胸から首の辺りまで徐々に登ってきて息子もそろそろ我慢の限界。刺されたら痛いだろうな?どうすればいいかな?病院かな?と思いながら、指ではじいて、ドキドキしながら逃げた。「子どもと一緒に覚えたい毒生物の名前」には、そんな子どもと出かけた時に遭遇するかもしれない身近にいる毒を持った生き物が、イラストや写真と共に紹介されています。予防法と処置法があわせて載っているので、いざというときに知っていると役立ちます。ちなみにハチの毒は水に溶けやすいので、刺されたら傷口をつまんで流水で洗い流すとよいそうです。 |
栄養まるごと10割レシピ! |
小田真規子/料理・レシピ 東京慈恵会医科大学附属病院栄養部/監修 |
世界文化社 |
料理をする時、栄養のことまで考えますか?我が家には育ち盛りの子どもがいるので、栄養のことは気にかけていたつもりだったのですが、調理方法でかなり栄養ロスしていました!野菜の切り方でこんなに栄養ロス?調理の仕方によって栄養アップ?目からうろこの調理のコツや調理法に、「へー、そうなんだ!」と驚いた1冊です。 |
淳子のてっぺん |
唯川恵 |
幻冬舎 |
ただの山好きなおばちゃんと思われがちな登山家の田部井淳子さんを、解剖とも言えるほど生い立ちやさまざまな人との出会い、最愛のご主人とのエピソード等、説得力のある文章で綴られています。女性として初めてエベレスト登頂に成功した淳子さん自身、何度も心折れそうな場面もあったはずなのに、生涯笑顔を見せていたことが素敵であり、その笑顔を支えていたご主人は、更に素晴らしいの一言です。「阿吽の呼吸」、夫婦の姿を感じてほしいです。 |
ラ・フォンテーヌ寓話 |
ラ・フォンテーヌ/作 ブーテ・ド・モンヴェル/絵 大澤千加/訳 |
洋洋社 |
フォンテーヌというフランスにおいては誰もが知っている詩人の、モンヴェルの挿絵が可愛らしい短編集です。「人生の教訓」がテーマの、大人向けの絵本といった感じです。納得がいくお話、できないお話・・・ どう感じるかはその人次第。一つ一つが、とても短いので、読みやすくなっています。 |
読む力は生きる力 |
脇明子 |
岩波書店 |
私達の身の回りには、テレビやインターネットなど、様々な情報であふれている。その中で、子ども達にはなぜ本を読むことが必要なのか。大学で学生を教える著者がたどりついた考えをまとめた本。赤ちゃんから絵本を通じてコミュニケーションを、というブックスタートにもふれている。身近な大人がしてあげられることは何か、丁寧に語りかける。 |
新世界透明標本[1] |
冨田伊織 |
小学館 |
透明標本は、骨以外を薬品で透明にし、硬骨を赤色、軟骨を青色に染色した標本です。見ための美しさだけでなく、魚類や甲殻類などの構造を知ることができるおすすめの1冊です。あなたも透明標本の世界を体験してみませんか? |
深夜特急 第1便~第3便 |
沢木耕太郎 |
新潮社 |
読み始めたら、旅の世界に引き込まれ止めることが出来ない。香港の熱いざわめき、インドのアシュラムという生活共同体での最下層の子どもたちとの日々、ギリシャのペロポネソスでの旅の神様が与えてくれた贈り物。こんな旅が出来るんだ。26歳の私は、インドのデリーからイギリスのロンドンまでユーラシア大陸を乗り合いバスで行く旅に出た。ザックには、本3冊、最低限の着替え、西アジアとヨーロッパの地図2枚を入れて1994年から約1年、実際には香港からロンドンまでを沢木耕太郎が旅をしたノンフィクション。旅のバイブルといわれ、時を経て読んだ人々を旅に駆り立てていく。旅をしながら、訪れた土地やそこに住む人々との関わりを通して、自分を見つめ、自分の居場所を探す”私”の姿に、読んでいる自分の姿をなぞらえるような気持になるのは、旅の魅力はもちろん、沢木氏の文章力所以と感じる。 |
朝ドラには働く女子の本音が詰まってる |
矢部万紀子 |
筑摩書房 |
毎朝の習慣「朝ドラ」!ひとつひとつに「働く女子の本音が詰まってる」中でも究極の本音は「あさが来た」の“あさ”だろう。女性実業家が珍しい時代。『家の外で守ってくれる五代さまと家のなかで守ってくれるだんなさま。どちらも超ハンサム。』(P106)に助けられて、事業を成功させていく。言うこと無し!でもやっぱり、ドラマとしての評価が高いのは「カーネーション」。主人公の”糸子”は、男社会の中で戦い続けるが、その根底にはどうにもならない『女であることの哀しみ』が流れている。その強さと哀しみ、切なさを演じた尾野真千子は素晴らしかった。等々。短いセンテンスで、するどく本音を語る。まるで女子会トークのように止まらない。まえがきに『女子たちたちに「そうそう、その通り!」と気持ちよく読んでいただけたら本望だ。そして働く女子がわかっていないおっさん(と書いてしまう)たちに、「へー、そうなんだー」って感じで読んでもらえたらいいなと思っている』とある。働く女子はもちろん、朝ドラファンの老若男女におすすめ! |
世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を巡る美しき協会と祈り |
松田典子/写真・文 |
講談社 |
今年、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に決定したニュースを聞き興味を持ちました。登録が決定してから数々の書籍が出版され、この本もそんな1冊…と思いきや、著者の方は10年以上かけて写真を撮ったそうです。その為、写真の一枚一枚がどれも丁寧に撮られていて建物の影やステンドグラスから差し込む光、季節の花々も綺麗に撮られています。そして信者の方々の祈る姿や、何気ない日常や笑顔の写真が多いのが印象的でした。建物だけでなく、そこに集う信仰を守り続けた人々もこの遺産の大切な一部なんだなと感じました。また、教会を見学する際のルールやマナー、教会までのアクセス方法、旅のモデルコースも掲載されていて旅行の際にガイドブック代わりにもなります。説明もありますが、写真が多く、三島市立図書館では宗教の分類の図書ですが、写真集の様な1冊です。 |