ボイスキュー2020年1月
ボイスキュー
ボイスキュー2020年1月
2022年の大河ドラマの発表がありました。北条義時を中心とした群像劇ということで「草燃ゆる」以来、久しぶりに伊豆の歴史に注目が集まることが予想されます。そこで、今回は数ある資料の中から、おすすめの本をご紹介したいと思います。
北条義時-これ運命の縮まるべき端か-
北条義時(1163~1224)は鎌倉幕府執権。源氏将軍(源頼朝・頼家・実朝)が途絶えた後、実質的に権力をふるい、政治の主導権をめぐる朝廷と幕府の関係悪化から発生した承久の合戦で、はじめて幕府軍が武力で朝廷を制圧。時代により評価が揺れる北条義時の実像に迫ります。副題にある「これ運命の縮まるべき端か」は、歴史書「吾妻鑑」からの引用ですが、吾妻鑑での描写などによって、義時は長い間冷酷非情な人物と考えられてきました。しかし、最近の研究では、違った一面を掘り下げているようです。
こちらの本には「伊豆の国の武士たち」という項目があり、北条氏関連遺跡の発掘と成果なども盛り込まれています。一般の方が手に取れる、最新の専門書といえるでしょう。
また表紙画像には、かつて三嶋大社で所蔵していた「北条太刀」(重要文化財)が使われています。
執権-北条氏と鎌倉幕府-
承久の乱を制し執権への権力集中を成し遂げた義時と、蒙古侵略による危機の中で独裁体制を築いた時宗。この2人を軸にして、鎌倉幕府の政治史を見通します。
著者の細川氏によると、義時は「降りかかる災難に振り回され続けた一生であった、その中で自分の身と親族を守る為に戦い続けた結果、最高権力者になってしまった」「頼朝の挙兵がなければ、一介の東国武士として一生を終えたであろう」ということなので、NHKの発表を見る限り大河ドラマでは、義時の人物考証はこの最近の学説を採用していると思われます。
北条義時(人物叢書82)
最初に紹介した岡田清一さんの本が出版されるまでは、唯一無二の伝記でした。1961年に発行された時には、伊豆地域でも多くの郷土史研究家が触発されて、様々な活動に精を出した様子が図書館所蔵の資料からも窺い知ることができます。今回の大河ドラマでも同じようなことがおこると楽しいですね。
著者の安田氏は故人ですが、静岡高校の出身で学習院大学教授を務め、令和天皇が学生時代にその論文指導にあたったことでも有名です。