ボイスキュー2013年9月

ボイスキュー

ボイスキュー2013年9月

アンデルセン物語-食卓に志を運ぶ「パン屋」の誇り-

「アンデルセン」というベーカリーをご存じですか?

店舗は全国にありますが、このパン屋さんは広島に拠点を置いています。

その本店は、元々銀行だった建物を改装し、とてもクラシックでおしゃれな雰囲気を醸し出しています。ですが、この建物は原爆ドームと同じく被爆建造物です。快適な空間と語り継ぐべき重い歴史の傷跡という相反するふたつの顔を併せ持ちます。

話は少し飛びますが、ヤマト運輸の創始者・小倉昌男さんが昨年に福祉財団の運営をされていたのはご存じですか?小倉さんは「アンデルセン」が開発したパンの冷凍生地を使い、ベーカリー経営の助言を受けて、「スワンベーカリー」という健常者も障がい者も一緒に働けるお店を複数展開していました。こちらの経緯は『福祉を変える経営』という本に詳しく載っています。

本業を充実させながら、社会の中で必要とされる存在になる。そんな理想的な経営がこの本に詰まっています。

立ち上がるヒロシマ1952

講和条約発効後の1952年8月6日、原爆被害を特集した岩波写真文庫『広島-戦争と都市』が刊行されました。岩波の写真文庫はテーマに沿って編集された写真が、まるでドキュメンタリー映画のように動き出しそうな優れた書物でした。しかし昭和の名カメラマン名取洋之助と長野重一が撮った市内の情景はほとんど掲載されず、百本以上のフィルムが残されました。その写真の数々が、最新の技術で蘇ります。

建設中の平和記念資料館、原爆ドームとみやげ物屋、マーケットや繁華街の賑わい…。原爆の爪痕はまだ生々しいのに、そこに生きている人たちのたくましさに驚かされます。

東日本大震災からの復興や原発など、日本の課題は数多くありますが、こうやって立ち上がることを経験したこの国なら大丈夫。そんな元気をもらえる一冊です。