ボイスキュー2021年10月

ボイスキュー

ボイスキュー2021年10月

今回は、三島市在住の絵本作家えがしらみちこさんの新作を中郷分館からご紹介したいと思います。

きつね山の赤い花

 おしゃれでおしゃまなゆみ子は、ままごとが大好き。ある日、人形をおぶって歩いていると、菜の花畑の中から歌声が聞こえてきます。声のする方をそうっとのぞいてみると、赤いリボンをつけて人形をおぶった子ぎつねがいて・・・。

 こちらは安房直子さんの書かれた「ねこじゃらしの野原ーとうふ屋さんの話ー」という物語の中から、とうふ屋さんの一番下の娘、ゆみ子を主人公としたおはなしを絵本にしたものです。抒情的かつ子どもの愛くるしさを感じさせる安房さんの物語に、えがしらさんの画風がとてもしっくりきます。

 安房さんは残念ながら、1993年に50歳で早逝されております。安房作品といえば、現実と不思議との境界線があいまいな世界での出来事という印象が強いですが、晩年は「彼岸」を強く意識していたようです。いずれにしても人間の悪意を描かない描写は絵本化にぴったりで、中郷分館にはえがしらさんの絵本以外にも同じ物語で、いもとようこさんが描かれた絵本もありますので、出典の物語集とあわせて読み比べてみてはいかがでしょうか。