ボイスキュー2022年4月

ボイスキュー

ボイスキュー2022年4月

今回は、中郷分館で、利用者の方から教えていただいた本の中から「心揺さぶる物語」と題して3つの小説をご紹介いたします。

旅猫リポート

 青年、宮脇悟とその飼い猫になったナナの旅リポート。その旅は、幼馴染みの友人たちに大切なナナを引き取ってもらうためのものでした。でも、なぜかナナは引き取られる機会を次々にぶち壊してしまいます。サトルも、そうなることを望んでいるかのようです。心優しきサトルと友人たちは、昔の思い出を懐かしみ、愛おしみながら別れます。そして最後に行きついたのが、サトルのおばノリコのもとでした。そこでの生活には、サトルを支えるけなげなナナの姿がありました・・・。去年8月に旅猫リポートの外伝2話が入った『みとりねこ』という本が出版されています。こちらもどうぞ。


少年と犬

 第163回直木賞受賞作です。ご紹介した一冊目は猫でしたがこの本では犬が心を繋ぎます。大震災から半年、飼い主と離れ離れになってしまった犬が、飼い主の元に戻るまでの遠く長い道のりを書いた小説です。次々に入れ替わる飼い主たちの危機に直面し、共に乗り越えようとする一匹の犬。犬が帰りたがっている場所があることを知る飼い主たちは、自らをさておき最後に犬を逃がしてやることを選びます。犬がなんとしても戻りたかった飼い主とは。幸せはそこに訪れるのでしょうか。


孤篷のひと

 日本三大茶人として名高い小堀遠州の生涯を描いた歴史小説。孤篷(こほう)とは一艘の苫(篷)船を表し、遠州が建てた茶室は孤篷庵の忘筌(ぼうせん)と名付けられています。豊臣から徳川へと政権が移行する時代に、天下泰平を願い茶の道を究めた遠州。豊臣秀吉・秀長、徳川家康・家光、石田三成、伊達政宗、藤堂高虎などの武将、茶の湯の師千利休、古田織部や細川忠興、そして徳川和子、織部の次女琴など多数登場します。一期一会と言われる茶の湯を通して人とまみえ、ただただ生きてほしいと願い茶を点て続けた遠州はいかなる人生を送ったか、どうぞ確かめてみてください。最期の言葉も名言です。